ヒーリングコースとは?
このコースは、カウンセリング、セラピーの知識、技術の習得を目指すだけの学習スタイルの講座ではありません。それは自分自身の意識下にある未完了な問題、あるいは、直面することが困難な過去の苦痛体験に向かい合い、それらを癒すためのコースです。なぜ、そのようなコースが必要なのでしょうか?
カウンセラー、セラピストのもとに来られるクライアントは、他人には言えない苦悩や痛みを抱えています。これらの課題の解決を促すためにカウンセラー、セラピストは存在しています。クライアントに関わるカウンセラー、セラピストは、心の問題のスペシャリストではありますが、同時に一人の人間でもあります。人間である限り、それなりの葛藤や解決できない問題を抱えていることもあります。もし、カウンセラー、セラピスト自身に苦悩や痛みがあるとしたら、クライアントに適切に向かい合い、寄り添うことが出来うるでしょうか。
例えば、愛する人を失ったという同じ悲しみ、痛みを抱えている者なら、共感はしやすいでしょう。そして、その関係によって、苦痛は癒されていくかも知れません。しかし、それはあくまで同じ立場の人間同士であるからよいのであって、カウンセラー、セラピストは同じ立場の人間ではありません。
そこには、程度の差はあれ、心のスペシャリストとしての専門性が求められます。もしクライアントと同じような苦悩や痛みを抱えていれば、共感はできても、クライアントがその問題を乗り越えるとなると、カウンセラー、セラピストは果たしてそれを上手く促進し、リードできるのでしょうか?
答えは、・・・・・ほとんどの場合、無理です。
あるカウンセラーの例です。
40代の男性カウンセラー。企業を中途退職してカウンセラーになりました。前職の経歴を生かして、地域に密着したカウンセラーとして活躍されていました。そんな彼が、二十歳前後の男性クライアントに対応していた時です。カウンセラーは、このクライアントに共感し、必要以上の感情移入を起こしてしまい、冷静ではいられなくなったのです。
そのクライアントは母子家庭で育ち、これから本人も社会に出ようとする矢先に母親が急死されました。クライアントは喪主として、母親の葬儀を立派に努め、その後も懸命に頑張っていらっしゃいました。このクライアントを前にしてカウンセラーは、この男性クライアントがどれほど悲しかろう、またつらかろうと共感しました。そして、このクライアントを支えていかねばと気負ってしまい、ついにクライアントとの面談に苦痛を感じるようになり、どうしたものかと相談に来られました。
人生経験も豊富で、それなりにカウンセラーとしての学習もしてきたのです。他にも多くの方のカウンセリングをしていたはずなのに・・・。一体このカウンセラーは、何に反応しているのでしょうか?
それは、自分自身の過去の苦痛体験です。このカウンセラーは、8歳の時に母親を失くしています。その後は後妻さんが母親として育ててくれたという経歴を持っています。つまりこのカウンセラーは、母親を失った、まだ大人としては未熟な男性クライアントの体験、存在に、8歳の時に母親を失った自分自身の体験を重ねて見ているのです。
このカウンセラーはスーパーバイザーとの面談の際「この男性のことを思うと、本当に大変だなと思うんですよ・・・だから、何とかしてあげたい、してあげたいけど、どうしていいかわからないんです。先生、こんな場合、どうすればいいのでしょう?」ということを訴えていました。
結論から言えば、私たちが具体的に出来ることはほとんどありません。そのことはカウンセラー自身も理解しているはずです。にもかかわらず、気になってしかたがない。やがてそれが、次第に自分の気分まで害するようになっていくのです。明らかにクライアントの問題ではなく、カウンセラー自身の未完了な体験を、無意識的に感じ取り、それを見ているのです。だからどうしていいかわからない。何とかしてあげたい・・・・。これは実際のところ、クライアントではなく母親を失くした8歳の少年(カウンセラー自身)の悲しみや、苦痛、絶望でもあります。このカウンセラーは、過去の自分自身の体験が十分に癒されていないことに気づいていないのです。
そして問題は、この「気づいていない」ところなのです。このような場合ですと、よく聞くことに、「もう過去のことですから、それなりに苦労しましたが、今は終わったことですので、何も気になりません。」というのがあります。確かに終わったことなのですが、意識的には問題を乗り越え克服したかもしれませんが、無意識のレベルでは未完了な部分があるということです。
この場合、カウンセラーは、クライアントに対する自分の感情の混乱が、自分の体験から来るとは思えない状態にあります。クライアントのために力になりたい、という思いは素晴らしいことですが、これでは、本末転倒です。心にはこのようなカラクリがあり、これを「投影」といいます。精神分析ではカウンセラーとクライアントの間でおこる投影現象を「転移」・「逆転移」と呼ぶことがあります。
転移とは、クライアントがカウンセラー、セラピストに対して、クライアント自身の中にある親への愛着や反発等をカウンセラー、セラピストに求めたり、逆に怒りをぶつけたりすることなどをいいます。
逆転移とはこれの反対で、カウンセラー、セラピストが自分の中にある未完了な問題をクライアントに見てしまうことです。この例ではクライアントが投影(転移)を引き起こしているのではなく、カウンセラーが投影(逆転移)を引き起こしています。
精神分析の世界では、転移は治療関係の中で大変重要なもので、この関係をどのように扱うかが、治療者の力量ともいうべきところとされます。しかし、いったん転移・逆転移を起こしてしまうと、その関係はかなり「いびつ」なもで、癒着、共依存状態といってもよい状態になることがあります。この場合、カウンセラー、セラピスト側がその心的負担に耐えられず、関係を早く終結しようとしたり、時には投げ出してしまうこともあります。多くの場合、クライアントが何らかの違和感のようなものを感じてカウンセラーの元を去ることで終わります。いずれにしても、カウンセラー、セラピストの心的負担はとても大きく、関係が終わったとしても悩み続けることさえあります。
カウンセラー、セラピストが、クライアントのためになろうとするならば、まず自分自身の未完了な問題や葛藤を処理してから、あるいはそれに気づいたら、出来る限り早く自分自身の内面を見つめ直し、トラウマがあればそれを癒すことが望ましいのです。
この未完了な体験は誰にでもあります。またその多くは、本人の生育歴の中で、特に親との関係に多く存在します。ゲシュタルト療法の創始者であるフレデリック・パールズは「人間にとっての最大の“未完の仕事”は親を許してないことである。」と述べています。
【質問】 このヒーリングコースには、カンセラー、セラピストを目指している人だけが参加できるのですか?
このヒーリングコースは、カウンセラー、セラピスト、あるいはそれを目指そうとする方のためのコースの一部ですが、単に自分自身の問題に取り組み、それを癒したいと思われる方、人生に行き詰まりを感じている方、心の問題で苦悩を抱えている方も自由に参加できます。まさに自分の中の“未完了”を完了させるためにも思い切って参加されることをお勧めします。きっと人生が大きく変わることを実感されるでしょう。
【質問】 ヒーリングコースではどんなことを学べるのですか?
セラピストにとって最も大切なものは臨床の現場です。このコースでは、セラピストでもあるトレーナーが個人の問題に直接働きかけます。またグループセラピーでもあることから、参加者同士が互いに影響を与えあい、個人では乗り越えられない問題も越えて行けます。自分自身の問題が癒されることが大切なことは言うまでもありませんが、実際のセラピーの現場に立ち会えることが何よりの学びになります。
このコースで主に使用されるスキル・心理モデルは、NLP、フロイト、ユングの無意識の精神力動、ゲシュタルト、ビジョン心理学の成長モデル、バート・ヘリンガーのファミリー・コンステレーション、トランスパーソナルサイコセラピーなどです。
【質問】 実際にはどんなことをするのですか?
コースは、主に2日間連続で行われます。まず初日は、参加者全員の簡単な自己紹介チェックインから始まり、グラウンディング(コースを円滑に進めるためのルール説明)、参加者一人一人のテーマの設定、バディ(このコースでの相棒)の決定とグループ分けなどが行われます。
バディ同士での対話の後、ジョイニングセッションが行われます。このジョイニングセッションは、相手の(バディ)の目を見つめるという簡単な行為を、BGMの音楽が流れる間続けます。初めての方には照れくさく感じたりしますが、人の目を見るという簡単な行為を通じて、自分自身の中にあるさまざまな感情や投影に気づくことができます。
続いて小グループに分かれてのロールプレイになります。ロールプレイは投影の引き戻しのワーク、感情の解放、さまざまな未完了な体験を完了させることを目指すワークになります。このグループには、ファシリテート役のアシスタントがいて、アシスタントが参加者の目的に沿った形でお手伝いします。
次に全体での働きかけになります。これは参加者の中から自分の問題を解決したいと望む方が、全体に対して自身の問題をシェアしてもらいます。その後トレーナー、ファシリテーターがシステムセラピーの手法によって問題を解決に導きます。
システムセラピーとは、ゲシュタルト療法、ビジョン心理学、ファミリーコンステレーションなどのグループセラピーの要素をNLP、精神力動論、トランスパーソナルサイコセラピー、などと統合的、かつ実践的に体系づけたセラピーの手法です。